時計遺伝子ダイエット

ダイエットガイド.jp

Dietguide:Tetsuya Kawaguchi

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更新日 2012-12-08 | 作成日 2007-11-18

時計遺伝子ダイエット(集英社)/香川靖雄著

評価:★★★★★
2012年は糖質をカットする低糖質ダイエットが複数の現役の医師から提案され、おそらく2013年にはダイエット界に一つの大きなムーブメントが起こると思われます。そして、おそらくその次のブームの最有力候補がこの時間栄養学系(時計遺伝子)ダイエットではないかと考えています。時間栄養学系ダイエットとは、何をどれくらい食べれば痩せるのか?よりも”いつ”何を食べれば痩せるのか?に注目するダイエット法です。なぜ、”いつ”が大切なのかといえば、人間には遺伝的に体内で時を刻むシステム(サーカディアンリズム)を備えており、そのシステムは食品の代謝にも影響を与えているのではないかと考えらるからです。一例としては、深夜2時前後をピークに脂肪の合成を促進するタンパク質(ビーマルワン)の生成量が増えるので、その時間帯を避けて食事をすると太りにくいに違いないといった内容です。著者は、朝6時から遅くとも18時(理想的には15時)までには食事を終えるべきと主張しています。その他特徴的な話としては、朝起きて2時間以内に朝食を食べると、時計遺伝子が正常に働く(リセットされる)ので、まずはそうするべきであるとも。

正直なところ、本書を精読するとかなりストレスが溜まります(ました)。それは8割は納得できるのですが、どうしても残りの2割が腑に落ちない。半分くらい納得できる本ならば、残りの半分はファンタジーとして楽しめるのに、さすが時間栄養学の大家の著書にはそのようなエンターテイメント性がございません。。。

著者は言います。たかだか100年ほど前までは、人間は朝日が昇って明るくなれば活動を開始し、夜になり暗くなれば一日の仕事を終えて夜の休息の時間帯に入る、という生活を送っていた。しかし、現代人の置かれた環境は、真夜中でもコンビニやファミレスが利用でき、昼夜を問わずテレビを楽しむことができる。このような生活スタイルの変化は本来の生物の営みに反している。そしてその本来の生物の営みに反した生活スタイルが体内時計(時計遺伝子)を狂わせ、肥満、生活習慣病、日々の疲れ、うつ病、不眠を生み出した(P7~8)。その体内時計を正常に働かせるための方法は、起きて2時間以内にアメリカン・ブレックファースト(目玉焼き、ベーコンorウインナー、チーズorミルクorヨーグルト、野菜サラダ、オレンジジュースor果物、コーヒーor紅茶)を理想とする朝食を食べることである(P22、P73)。

そもそも100年前の人々が朝起きて2時間以内に食事を摂っていたのか?しかもアメリカンブレックファーストを。

そういった疑問を持つ人に対して、著者はさらに朝食のダイエットへの有用性を説きます。アメリカの栄養調査によると、朝食を食べている人は食べてない人に比べて、1日当たり500キロカロリーくらい摂取エネルギーが多い、しかし、太っている人は逆に5分の1である。つまり、朝食を食べる人は代謝がよく(エネルギー消費が多く)なり、太りにくいのだと(P66)。

でも、それって、見方によっては朝食を食べるとエネルギーのロスが多くなるってことですよね?朝食が遺伝的なリズムと合ってない一面を逆に示しているのではないですか??

著者は続けます。朝食を食べている子どもと食べていない子供の学業成績は、食べている子供の方が2割高いという調査がある(P78)。著者の勤務した女子栄養大学(p78)や自治医科大(P90~100)でもそのことが実証された。自動車の運転シュミレーターを用いた実験でも、朝食を食べなかった場合事故率が5倍になる場合があるとの実験結果がある(P110~112)。そういう意味からも朝食は大切なのだと。

ですから、100年前の人たちが朝早くからキリキリ計算問題を解いたり、車を運転していましたか?子供の学業成績と朝食の関連性については、親の収入や就業時間(子どもと接する時間)、学歴などの家庭環境も十分加味して結論づけられていますか?もしかしたら、朝食を食べない(朝食が準備されない)家庭の子供の両親は、共働きや長時間労働の比率が高く、収入や教育費(通塾率)も低かったりしていませんか??そもそもダイエットの話からかなりそれていますが。

もちろんダイエットにも朝食は直接的に重要であると著者は言います。それは、脳が働くためにはブドウ糖が必ず必要で、ブドウ糖が足りなくなると筋肉のアミノ酸を分解してブドウ糖を作り出さざるを得なくなる。すなわち、朝食を食べなければ、筋肉が減ってしまい代謝の悪い太りやすい体になってしまうのだ(P85~88)。

確かに絶食を続ければそうかもしれませんが、朝食を抜いたくらいで筋肉量が減りますか?仮に糖新生が行われる(アミノ酸が消費される)としても、昼食や夕食でアミノ酸を補給すれば良いだけの話ではないですか??

といった、具合に、私が読むととても疲れる本です。でも、冒頭で申し上げた通り、私が腑に落ちない点は2割ほど、その2割を埋めていただける論客が現れた日には、私もダイエットガイドとして全面的に時間遺伝子ダイエットを推したいと思います。

参考までに、時間遺伝子ダイエットで実践すべきことはかなりシンプルです。

○朝起きて2時間以内にバランスのとれた朝食を食べる
○朝日を浴びる
○野菜を食べてからご飯を食べる
○ボリュームのある食事は6時から15時までの間に食べる
○できるだけ夕食は18時までに食べる

くらいかな。


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